J-DOPPSについて

J-DOPPSは、Japan Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study(日本における血液透析の治療方法と患者さんの予後についての調査)の略です。国際的な共同研究DOPPSの一部として1999年から参加し、約20年にわたり日本の血液透析療法の実態を調査してきました。

そして、2019年から始まりました第7期調査より、J-DOPPSは複数企業の支援を受け、日本腎臓財団が主宰して実施する体制になりました。現在は、集計データの公表や、DOPPSのデータを基にした論文発表の機会拡大など、公益財団としての特性を生かした活動を行い、研究の成果を透析医療全体の発展のために役立てています。

日本の透析医療の特徴

各国との様々な比較から、日本の透析医療が世界の中で優れていることが明らかになるなど、大きな成果を上げています。

これまで発表された論文から、日本の透析の特徴として以下の点が挙げられています。

  1. ①長生きされている患者さんが多い
  2. ②有用なバスキュラーアクセスを使用している
  3. ③医師からの指示を正しく守る患者さんが多い
  4. ④医師と患者さんとの接触が多い

日本の透析患者さんが長生きなのは、上記②~④の特徴からではないかと言われています。

また、日本の透析医療を参考にして世界の透析医療が改善されています。例えば、バスキュラーアクセスは患者さんの状態によって決められますが、日本では患者さん自身の血管を使う内シャントの使用率が高いことがわかりました。さらに、内シャントに比べて人工血管などは死亡や入院の危険が高まることも報告され、内シャントの使用が見直されるきっかけとなりました。

このように、DOPPSの調査結果は論文として数多く発表され、各国の診療ガイドラインや医療行政に影響を与えています。日本においても、腎性貧血、慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常、バスキュラーアクセスの各ガイドラインにおいて、治療方針の根拠として引用されています。

参考資料

  • 1) Akizawa et al. Lancet 388(10041):294‒306, 2016
  • 2) Good DA et al. J Am Soc Nephrol 14: 3270-3277, 2003
  • 3) 秋葉隆ほか,透析会誌37: 1865-1873, 2004
  • 4) Pisoni et al. Am J Kidney Dis 53:475-791, 2009
  • 5) Saran R et al. Kidney Int 64: 254-262, 2003

J-DOPPS第8期調査 研究概要

研究の名称
J-DOPPS第8期調査 Japan Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study 日本における血液透析の治療方法と患者さんの予後についての調査
研究の目的

日本における透析患者さんのデータを収集・分析することにより、治療方法が患者さんの余命や生活の満足度(QOL)にどのような影響を与えるかを調べる。

研究デザイン
多機関共同前向き観察研究
研究対象
18歳以上の血液透析患者
研究期間
2023年12月~2026年10月
研究参加施設
48施設(施設は所在地や経営母体などが考慮され、無作為に抽出されます。)
調査項目

患者背景(現病歴、既往歴、併存疾患など)、臨床データ、血液透析処方、投与薬剤、施設毎の透析業務・方針、余命、入院、バスキュラーアクセス、健康関連QOLなど

J-DOPPS第8期 調査方法

2023年12月より約3年間、全国の48施設にご協力をいただき、調査を行ないます。
第8期からは研究対象として新たに血液透析を開始した患者さんが含まれることになりました。
調査では、はじめに施設で治療を受けている18歳以上の全血液透析患者さんのデータを登録し、その中から無作為に選出された最大30名(既導入16名、新規導入14名)の患者さんに対し、J-DOPPS調査についての説明が行われ、同意された患者さんに調査へご協力いただきます。

調査項目は、病院での検査データ、使用している薬、ダイアライザー、バスキュラーアクセスの種類などの一般的な臨床データの他、施設の規模、治療方針、スタッフの人数や配置など多岐にわたります。また、患者さんへアンケートをお願いしており、医療全般や、心身の状態などの質問に答えていただきます。